イトウの採卵2002

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■イトウの採卵2002

今年も春を告げるイトウの採卵シーズンがやってきました。
4月3日にさけ科学館孵化室にて採卵を実施しました。
今回は、その様子をボランティアの岡田さんがレポートとしてくれました。


イトウの採卵

 平成14年4月3日に札幌市豊平川さけ科学館でイトウの採卵をお手伝いしました。
その採卵について報告します。
採卵風景
●イトウについて
イトウ  学名Hucho perryi
分布域
千島列島南部、サハリン、沿海州。
日本では北海道のみに生息。かつては東北地方にも生息したが絶滅した。
絶滅危機種(Cr)として北海道レッドリストにあげられている。
人工種苗生産に成功したために各地で養殖が行われ、食用、遊魚用として利用され始めた。
イトウについて補足
イトウ属の中で、本種のみが降海型もいる。2歳の春以降に海水適応するが、降海しても沿岸から離れることはない。汽水性のものも多い。アメマスのように淡水と海水を行き来する魚もそんざいする。アムールイトウなどでは、体長30cmを超えてもパーマークを残しているなど、大陸産の本属は淡水に強く依存している。
産卵期は春、北海道では4〜5月に行われる。落差の少ない本流の上流域や、支流に入って産卵する。成熟は、オスが4〜6年で、メスは6〜8年。メスの卵数は70cmぐらいのもので約3000粒、90cmのもので約5000粒くらいである。

●採卵
今回採卵したのはメス3匹で授精用にオス2匹を使用しました。
さけ科学館では採卵後も飼育するのでおなかを絞る方法をとりました。
さけ科学館のイトウはS60年の春に空知川で発眼卵を採取して持ってきたもので、現在飼育しているイトウはその子孫です。

●今回の採卵データ
イトウ♂ 全長84cm・尾叉長81cm・体長76cm・体重7.0kg 
イトウ♀ 全長97cm・尾叉長94cm・体長88cm・体重8.5kg
採卵数2,980粒・収容数2807粒・死卵32粒・卵径6.6mm・卵重0.175g
※ メスの採卵数は放卵したものや、おなかに残った卵があるので正しい数値ではない。
*全長とは、魚の口の先から、尾びれの先端までを測ったもの
*尾叉長とは、魚の口の先から尾びれの叉の最もくぼんでいるところまでを測ったもの
*放卵とは、採卵以外でなんらかの衝撃により卵を体外に放出してしまうこと

●感想
イトウの赤ちゃん
 イトウの採卵は他のサケ科魚類と比べると抱卵数が多いので、おなかから卵を絞り出すときに腕がつらくなりました。卵のサイズもシロザケなみでおおきく綺麗なものでした。1シーズンでこれだけの卵を抱卵するのに絶滅危機種になってしまったのは、砂防ダムや護岸工事による産卵期に上流や支流に遡上できなくなったためです。これにより知別川のイトウは壊滅の危機にたたされていると考えられます。サケ科魚類にとって産卵環境というものがどれほど大切なものかまだわかっていない人が多いと思います。豊平川ではススキノあたりの湧水の涌き出る場所で産卵するし、支笏湖のニジマスは融水を利用して増水した小さな河川に溯上して産卵しています。昨年採卵して1年を迎えたイトウはすくすくと大きくなっていっています。これを考えるとイトウは強いサカナなので産卵場や親魚の隠れ場(生息するのに必要な淵など)があれば増えていくのではないかと考えてしまったイトウの採卵でした。
<引用文献>
・井田薺(いだひとし)・奥山文弥(おくやまふみや)(2000年)4章魚類解説 イトウ 
・サケ・マス魚類のわかる本 株式会社山と溪谷社(東京)P150〜151
北海道東海大学工学部海洋開発工学科
札幌市豊平川さけ科学館ボランティア
岡田 理成
>>イトウの採卵2001

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